「(種は)良い土に落ち、成長して大きくなり、実を付け始め、30倍、60倍、100倍の実を結ぶようになった」

先号に引き続きDreamin’B Sumiyosiさんです。

続きですのでさっそく購入したパンのご紹介。

まずは王道
手ごねリュスティック

以前にも書きましたが(7号)、リュスティックとは「田舎風の」という意味があるそうです。シンプルな構成ながら素直な奥行き感があります。そのためなのか食す人によって異なる反応。かみさんは塩味を感じると言いますが、私は甘みを感じました。パンの断面は黄色がかった白。

京小麦の手ごねバゲット

リュスティック同様、シンプルな構成です。が、「しっかり・はっきり」と表現できる歯触りと味だと思います。こちらはリュスティックとは別の酸味を感じます。断面は淡い茶色です。

2つの定番的なパンをご紹介しましたが、その断面の色について書きました。と言うのはそれがこちらのお店が本格的だと言える大きな要素の一つだと思うからです。

断面の色の違いがはっきりしている、すなわちそれはパンの種類によって小麦の種類を細かく分けていることを意味しています。

このバゲットは商品名にあるように「京小麦」です。前出のリュスティックは「はるきらり」。他にも「みのりのちから」「スペルト小麦」「九州産全粒粉」等を用いておられます。

お店の方にお尋ねすると、その日は全部で何と13種類もの小麦を使い分けておられるとのことでした。場合によってはそれ以上の種類のようです。

バターにしても先号のクロワッサンはAOP発酵バターでしたが、他にも高千穂バター等も使っておられます。

材料のハイレベルな使い分けは主原料だけではなく、副材料にも表れています。

で、有名な大山ハム(「オオヤマ」ではないですよ。山陰の名峰「ダイセン」)を使ったパン・・・

大山ハムと柚子胡椒マヨオニオン

裏方のはずのオニオンが凄いです。香ばしいんです。そして、一口思いっきり噛みしめるとそのオニオンが大山ハムとパンと柚子の風味を同じステージへと招き入れます。とにかくオニオンが凄い裏方役を果たしています。いや、こうなると主役か?

ベーコンダッチチーズ

外見からして食欲をそそります。生地はダッチブレッド。その表面の模様からタイガーブレッドとも言われていますね。中身はと言うと、4種ものチーズがとろ~り、ベーコンがこんにちは~です。舌触りはチーズ、味覚はベーコンと言う二重奏曲のようですが、その2つが生み出すのは食欲をさらにそそる香りの楽曲です。そんでもって、底面に溶けて固まっているのはチーザ(商品名ですな)のようなチーズか?これも美味し~。この4種ものチーズとベーコンも厳選材料ですね。

3種のレーズンパン

レーズンの甘さと酸味がフワッとした優しい女優となって演じているパンという感じがします。そのためか上品な感じさえします。

クルミとキャラメル

噛むと爽やかな苦みがまず広がります。それがクルミとキャラメルだと気付くのがワンテンポ遅れるくらい苦みの調和がとれています。大人のシンプルな和音という感じかしら~ン。これは渋い低音だ。でも重厚ながらも軽やかさを感じるので、チェロまではいかないビオラの低音の心地良い響きと表現したらいいんでしょうか。

ピーナッツバター食パン

食パンとの命名の割には可愛らしいですね。散りばめられたクラッシュピーナッツが歯ごたえとともに余韻を残してくれます。

牛乳食パン

北海道産の「みのりのちから」小麦を使っています。麺類に使われることも多い品種ですね。
牛乳だけで仕込んでいますが、食べてみるとミルク感は全く出しゃばらず、あくまでメインは小麦です。ほのかなミルクの香りと塩味がふくよかな食パンです。

「芸術は一歩先に行ってはいけない。半歩先でなければならない」という言葉があります。ホンダの創設者本田宗一郎氏も商品技術に関してそのように言っておられたそうです。
(別に芸術は一歩以上先に行っちゃってもいいと思うけど・・・)

あくまで私のデタラメっぽい主観ですが・・・
Dreamin’B Sumiyosiさんの戦略もそんな感じがします。あるいはそうでなければならないかなと感じます。先号にも書きましたが、江東区のこのエリアにしてはハイソ感のある本格的なパン屋さんゆえ・・・。

比較すると・・・。

同じ江東区でも住吉の西側にある清澄白河地区は、いまやカフェやブーランジェリーの街になり、観光地と言ってもいいほどになっています。「ブルーボトルコーヒー」の出店の宣伝効果もあり、「作られたイメージ戦略」のある街っぽい感じがしなくもありません。

でもDreamin’B Sumiyosiさんがある住吉にはそのようなイメージは作られていません。いまだに昔ながらの下町という感覚です(すみません)。

一方、清澄白河エリアはオシャレ感を身にまとい始めた感じがします。
個人的にはこのエリアの強みは、脇を流れる隅田川にあると思っています。
地理的に隅田川がすぐそばにあるというのは、水平方向だけではなく縦方向にも空間が伸長していき、街の構造以上に膨らんだイメージを抱くことが出来ます。
またさらに、江戸時代から現代に至るまで版画の題材になるなど(歌川広重・川瀬巴水等)、積み重なった歴史的連続性が時間的広がりをも与えています。
加えて、このエリアには清澄庭園や深川江戸資料館があり、ランドマークとなっています。

それらがイメージ戦略と相まって、人を引き付けるカフェやブーランジェリーがハイソ感を伴って違和感無く自然発生的に存在し、魅力を発信できるのではないでしょうか。

う~ん、これは強敵だ!

では、それに対抗するDreamin’B Sumiyosiさんのタクティクスはというと・・・、
このエリア、この土壌に迎合することなく、ハイソ感と本格的感で「一歩先」ではない「半歩先」を保ち続けることこそが魅力なのではないかな~。

冒頭の言葉は聖書の一節です。本来の適用とは異なりますが、このエリアこの地が、Dreamin’B Sumiyosiさんによって蒔かれた「種」が成長して沢山の実を結ぶようになる「良い土」になるかどうかは、相互関係によると思います。

Dreamin’B Sumiyosiさんがお客さんを置いてきぼりにする「一歩先」ではなく、ハイソ感においても本格的感においても「半歩先」を保つならば、そしてこのエリアのお客様がそのことを常に感じ取ることを意識しているならば、「良い土」となって、たくさんの実りをお互いに与え得ることが出来るのではないかな~。

もちろんそのためには、芽生えた種が元気に成長していくために、日ごとの絶えることないお世話という「常に半歩だけ先を見た仕事」が必要です。
そして、「自転車で行ける」範囲にお住まいの皆さんが定常的に購入のために訪れることも必要です。
そうすれば、このエリアは耕し続けられて「良い土」となり、清澄白河地区とは異なった魅力を発信できるようになっていけるかも・・・。

いつも半歩だけ先に行った新たな発見を楽しめる数々のパンたち。
ハイソ感と本格的感を十二分に発散しつつも、トングで幾つものパンをトレーに運び込んでしまうアリ地獄感。
そして、品質とサービスを含めた明るい雰囲気全てで、このエリアのお客様を温かい気持ちにしてくれる、みんなを引き寄せるパン屋さん。
Dreamin’B Sumiyosiさんはそんな素敵なお店です。いや、きっともっとそうなっていきます。

そんなパン屋さんを続けてほしいなと思います。
(と、私のような者が言ってもしょうがないか・・・)

 Dreamin’B Sumiyosi
 住 所:江東区住吉2-2-4
 営 業:月曜日が定休日
     8:00~18:00

それでは失礼いたします。
「もっとお米を食べようね社」


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