門前仲町の繁華街から南側の運河(大横川)を渡り、裏路地に入ってみましょう。

そこにたむらパン(Tam Lapin)さんがあります。

上のアイキャッチ画像の店名はマンションの壁に直接書かれていま~す。

お店の名前が壁に書かれていても、何も知らないとここがパン屋さんだとは気付きませ~ん。

ところがとこらが、こちらのお店、ご主人の経歴を含めてのトータルな意味でレベチなんです。凄いんです!

入ってみますと、ご主人がガラス張りの奥の工房で、台の上に両腕をついてパン生地を捏ねていらっしゃるんですが・・・。
(下はガラス張りの工房の写真です。これにはご主人は写っていませんが、ガラス際に横向きで生地を捏ねていらっしゃったようで・・・?)

「いらっしゃいませ」も何も言わない!こっちも見ない!
なんだ~、お高くとまってんのか~?ちょっと失礼だな~!

しょうがないのでパンを選んでいると、どこからか変な音が。
「ガ~」「ス~」「ゴ~」「ス~」「グォ~」
いったい何の音だ~?と最初は分からなかったのですが・・・。

そうです。お察しの通りご主人のいびきの音です! 生地を捏ねておられたのではなく、立ったまま!寝ておられたのです。お疲れのところすみません。

やっと目が覚めて、
「あっ!いらっしゃいませ!す、すみません。寝ちゃってたみたいで」と、とても恥ずかしそうにしながらも満面破顔笑顔で出てこられました。
お高くとまっているどころか、ソフトで気さく、近づきやすい雰囲気大発散です!

店内

たむらパンさんのパンは、お近くのフレンチレストランの「渡辺料理店」さんで使われています(冒頭に書いた大横川の際にあります)。
実はこの渡辺料理店の渡辺氏は、皆様も聞かれたことがあると思いますが、うちら小市民が逆立ちしても一生行けない銀座のフレンチの超有名店「レカン」の元総料理長だそうなんです。レカンをお辞めになってご自分のお店を出されたんですが、そこに出すパンとして選ばれたのがたむらパンさんのパンなのです。

たむらパンのご主人の田村氏は、あの2008年のサミット(先進主要国首脳会議・通称:北海道洞爺湖サミット)の舞台となったザ・ウィンザーホテル洞爺のオテル・ド・カイザーで働いておられたそうです。

オテル・ド・カイザーはパン好きの人にはまさに聖地。数々の有名パン職人を生み出しています。それもそのはず、パン作りの天才フランスのあのエリック・カイザー氏が使っているのと同じ粉を日本で唯一使うことを許されたお店なんです。

その後、田村氏はパレスホテル東京やパン作りのカリスマと言われる志賀勝栄氏のシニフィアンシニフィエで活躍されました。

購入したパンたち

チーズカンパーニュ(左)・クロックムッシュ(右)

チーズカンパーニュ
チーズの香りがたまりません、カンパーニュはまわりがさっくりですが、中は適度な柔らかさでとても食べやすいです。
クロックムッシュ
ご覧の通りチーズモリモリたっぷりで贅沢です。

シナモンアップル(左)・きな粉バゲット(右)

・シナモンアップル
クルミもたっぷり入っていて上品なシナモンが香しいです。中のアップルペーストはもちろん既製品の味ではありません。
きな粉バゲット
きな粉の香りがやはり上品です。また、硬すぎることなく食べやすい歯触りです。

メロンパン(左)・ぶどうパン(右)

メロンパン

ここでメロンパンについて少し・・・

メロンパンの出自についてはいろいろと説があるようですが、「メロンの味と香りがするのがメロンパンである」という定義は間違いです。上掛けのビスケット生地がメロンを連想させるというところから始まっているというのが有力のようです。

その香りで客を引いておいて、短い間だけ営業した後はトンズラするという、いわゆる「ひっかけ屋」のようなお店のメロンパンはいかがなものか。あれって、冷めるととても不味いでしょ。

でも、たむらパンさんのメロンパンは本物です!
メロンの香りも味も全くしませんが、これこそが本当のメロンパン

ハード系がメインのこの店にあっても、お年寄りや子供たちにも食べてもらいたいと、シニフィアンシニフィエの志賀氏とともに作り上げた傑作です。

ふんわり滑らかなブリオッシュにサクサクのクッキー生地!大人も大満足!

ぶどうパン
干しぶどうがたっぷりで、生地とぶどうの硬さが物凄いハーモニー!大げさではありません。この硬さのバランスは相当なもの!

食パン

重~い!そして焦げ目がとっても良い香り。生地はさっくりとしっとりのちょうど中間の適度な舌触り。食べ終えてパンが口の中から消えてからも、小麦の甘みと旨味が角の取れた形で余韻として残ります。嘘くさい表現?でも本当だもん。

そして、そしてクロワッサン

カンパーニュとともにたむらパンさんの渾身の力作!某テレビ番組で「クロワッサン専門家」の方によって紹介されたためか、朝一から並んでいるお客さん全員のお目当てはこのクロワッサンです。

なんでもオテル・ド・カイザー時代に、フランスから派遣されたシェフ直伝のレシピで作られているそうです。

最初はさっぱりとした感じがするのですが、噛みしめると深みのあるバターの香りと味が残っていきます。生地の中の気泡が割れる際に発酵バターの風味が口内いっぱいに立ち昇るためでしょう。この生地の巻きは、まさに熟練職人のなせる業です。発酵バターは北海道のよつ葉乳業製(後発号の別のお店紹介の際にもまた出てきますのでお見知りおきを)だそうです。

質を保つために1日20個のみの焼き上げです。そして購入はおひとり様2個までです。確実にゲットするためには朝一からお並びくださいませ。

カンパーニュ
すみません。写真を取り忘れていました。店内紹介の3枚目に写っています・・・。
田村氏のカンパーニュへの思い入れは相当強いものがあるようです。ハード系がメインのお店であり、カンパーニュはまさにハード系の代表格ですが、「食べ疲れしないものを作りたい」と完成させたそうです。

他にもいぶりがっこめんたいこ、醤油とおかかが入った青唐辛子しらすバジルイカ墨などもいただきました。

ウンッ?これってなんだか酒のつまみみたい(お間違いないように。上記はすべてパンの名前です)。
実はたむらパンさん、午後から夜にかけては飲み屋さんのようになっちゃうんです。奥様(銀座の有名カフェバーの元店長さん)が作るお惣菜とご主人のパン。そして、ワインとチーズ。

それに、店内写真を見てお気づきかもしれませんが、壁にサインや飾りもののディスプレー。

大勢のアーティストさんともお知り合いのようで、お店をギャラリーとしても用いておられます。伺った際には、バイオリニストのリサイタル予定も張り出されていました。

そのように人脈の広いたむらパンさん。アイキャッチ画像に載せた壁に直書きされた店名。これもお知り合いのアーティストさんがデザインし、描かれたものだそうです。
加えて、「たむらパン Tam Lapin」となっていますが、それはご主人と奥様が兎年だからだそうです。フランス語でウサギは「Lapin」なんですね。

いずれにしても「パン屋さん、パン屋さん」していない、適度に力の抜けた雰囲気は、これまでの経歴とパンへの自信そして食と生活への考え方の表れなんだと思います。

お店のコンセプトも「パンの見えないパン屋さん」とのことです。

ぜひ、お立ち寄りください。

たむらパン(Tam Lapin)
住 所:江東区牡丹3-9-1 第一グリーンハイツ1F
営 業:AM7:30~売り切れまで(お昼前には売り切れます)
    お休み 水曜日・木曜日(お店のインスタグラムでお確かめください)
    上記以外にも夜までの営業もあるためか開店時刻が遅くなる場合もあります。
    (ご主人、どうかご無理をなさらないようにおねがいします)

それでは失礼いたします。
「もっとお米を食べようね社」


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