「我々は大抵の場合、見てから定義するのではなく、定義してから見る」(ウォルター・リップマン「世論」)

今回はYeast Side Donutsさんです。

店名の通りドーナツ屋さんです。
・・・、エッ?「自転車で行けるパン屋さん通信」なのに? ドーナツはパンじゃない?
まあエエやん。

去年(2024年)の11月15日にオープンしたばかりです。
沢海橋から南東方向に抜ける斜めの路地がありますよね。そこを覗くと・・・

ライトイエローの可愛らしく慎ましやかな小さいおうちがYeast Side Donutsさんです。
行列が出来てます!

お店に入ると、やはり慎ましやかでありながらも気さくにかつ上品な雰囲気でお出迎えしてくださいます。

工房を兼ねたお店の中もこじんまりとしていますが清潔感がありますね。

ドーナツはパンじゃない!とのお考えもおありでしょうが(私もそう思っていました)、ウィキペディアを見てみるとUSAでは「朝食の代わりとして食べる」そうです。そのように食事になるためか、ダンキンドーナツでは警官には割引して提供していたそうです(お店の警備を兼ねて)。

と言うよりも、Yeast Side Donutsさんのドーナツは単純なスウィーツの範疇を超えていると思います。
そうです。 定義してから見るのではなく、食べてから定義しましょう。

毎回行列ができるくらい美味しいので、どんどん売れていきます。

でも大丈夫。棚には揚げたてがスタンバイ。

揚げたてを丁寧に袋詰めです。
それを可愛らしいほのぼのとした袋に入れてくださいます。店名はハンコで押しているそうです!

コーヒー類もテイクアウト出来ます。
福岡の有名店Shirouzu Coffeeの豆を使ってらっしゃいます。

ドーナツと言うといわゆるコンビニドーナツがブームになったことがありますよね。さらに専門チェーン店としてはMさん、日本を撤退しましたがDさんが1970年代から続いていますね。

私も何回も食べてはみたんですが・・・。実は一度も美味しいと思ったことがありません(すみません)。やっぱり買うんじゃなかったとの思いしか残りませんでした(すみません。個人的感想です)。ドーナツならスーパーで売っている袋詰めになったものの方が私の安い舌には合います。

でも、Yeast Side Donutsさんのドーナツは本当に本当に美味しい!と思います。こんなドーナツは初めてです。

お店のご主人によると、チェーン店などと異なるのは、型抜き成型ではないということだそうです。一つ一つ丁寧な手作業による成型です。

そして、他にも大きな特徴がありますが、それは後述します。


奥様お一人で生地を伸ばして作ります。
この動き!なんと言う手練れ!この素早くも美しい動きは熟練職人そのもの。実際、長年の修業をされたそうです。

では、ドーナツの紹介です。

シュガー

一番オーソドックスに思えるドーナツからの紹介です。 が・・・、これがオーソドックスではない! 私の知っているドーナツではないのです。しっとりでもない、モチモチでもない、ふんわりでもない。そして適度な甘み。不思議です。生地の厚みのバランが絶妙に取れているためなのか・・・?

焦がしきな粉

シュガーに似た外観ですが、はっきりと焦がしたきな粉味です。 が、これもなんでしょう?全体として甘さが適度に抑えられて、口内で生地と焦がしきな粉が一体となるのです。そのためシュガーとは全く別物。どうして一体となるのでしょう?

シュガーにしても焦がしきな粉にしても甘さが適度に抑制されているので、人によっては食事の「パン」とみなしてもOKだと思います。

そのことは次のドーナツでは顕著です。

クリームチーズ

真ん中に多少の塩味を感じるクリームチーズがド~ン。これはきっと生地の甘みとのコントラスト狙いなのかな?と思って噛みしめてみると・・・。いやっ、違う!生地とクリームチーズと周りの砂糖が完全に一つとなる! う~ん、なぜだろう? そしてタンパク質の大きな塊を食べられる。食事だ。

クッキークリーム

これは甘~いスウィーツと思って口に含むと、やはり抑えられた甘み。乗せられたクッキーが全体となじんだ美味しさがあります。この均一感は不思議です。

ザ・チョコ

きめ細かな均一な生地と滑らかなチョコが同一体となる感覚が楽しいというよりも凄いと思えます。これもまた甘さの加減が絶妙です。

ブルックリン ストロベリー

ブルックリンタイプのドーナツです。生地が硬めに仕上げられています。ストロベリーの香りが爽やかさを感じさせます。人工的な香りと異なり、ほのかですがその爽やかさが続いていきます。それを楽しませるのが硬めの生地。ほろほろと崩れてしまうギリギリ手前。この際(きわ)にとどまるのはかなりの技量。

ブルックリン シナモン

口に含むとシナモンが強く香り立ちますが、口内で生地となじむとその並行感と平衡感が抜群です。どうしてなんでしょう?このドーナツにバランスを与えているのは、生地とシナモンの均一性か?

全体としての特徴は「食べ飽きない」「食べ疲れしない」「嫌な油っこさが全くない」と言えると思います。3つの「ない」が並んでしまいましたね。でもこれは今まで知っているドーナツのネガティブな部分を否定する言葉です。それらが無くなったドーナツはとても美味しいんですね。

否。 既述しましたが、Yeast Side Donutsさんのドーナツはそんな単純な範疇を超えていると思います。

それぞれのドーナツの紹介で「不思議・どうして・なぜ」という言葉と並べて「バランス」「一体」「均一感」「一つになる」等と表現してみたんですが、それらにはいくつかの意味合いがあるように思えます。

① 生地に油が沁み込んでいるのかいないのかが分かりません。もちろん、油で揚げてはいるのですが、その油がどこかに行ってしまったのか、全体に均等に奇麗に分散したかのような感じなのです。

② なぜか、生地の表面から中心部まで同じような歯ざわり舌触りで食べられます。表面が硬いブルックリンタイプでさえそうです。

③ 口に含むと副材料と生地が違和感無くまとまります。なぜなのかちょっと分かりません。なので食事パンとみなしても良い種類があるのだと思います。

どうしてこのような深みをも感じさせるアイデンティティが創られるのか、素人の私には分かるはずもないのですが、前半部で既述した「手作業による成型」に加えるべき他の大きな要素のためかもしれません。

それは、「米油」でドーナツを揚げておられるということです。
生地の発酵と奥様の熟練の捏ねと相まって、「良質の米油で揚げる」ということが独特のアイデンティティを生み出す秘訣なのでしょうか。
いや、そんな単純な問題ではないんでしょうね。
でも、ドーナツはただのお菓子ではなかったのでした・・・、ということは分かりました。
反省・・・。

ここでうんちくコーナー

米油の特徴
 ・米油で揚げると泡立ちが少ないので油っぽくならず、揚げムラが出来にくい
 ・いわゆる「油酔い」の物質が発生しにくい
 ・非常に酸化しにくい
 ・トコトリエノール等、有益栄養素がたくさん
 ・無味なので材料や素材の邪魔をしない

だそうです。

「我々は大抵の場合、見てから定義するのではなく、定義してから見る」というウォルター・リップマンの言葉を持ち出すのはちょっと大げさだとは思いますが、
(でも、この言葉は私達の持つ良いとは言えない傾向を言い表していると思います。私たちは貧弱な情報と浅薄な推論で狭量な理解をし、物事や自分を含めた人のこと思い込みと無思慮な言葉で早々に決めつけてしまいます)
「ドーナツは食事にはならない」「ドーナツは美味しくない」「ドーナツとはこうあるべきだ」そして「ドーナツなんてただのお菓子でしょ」といった、食べる前の定義はことごとく覆されました。

と、そんな小難しいことは忘れましょう。美味しいものはとにかく美味しいんです!

皆様、是非ご賞味くださいませ。

と言っても、こちらの営業は基本的に土曜日と日曜日の12:00~17:00のみなのです。
(下記は、2024年2月のスケジュールです)

マネージャーのエプスタインがアンコールにも絶対に応じないたった30分だけのコンサートをビートルズに課すことによって、その希少性と貴重性を高めたのと似ている・・・?

では、全くありません!
ご家庭・子育てがおありでこれが限界だそうです。営業日も朝の2:00から発酵を含めた作業をされているそうです!大変なんです!

それでも、「営業は17:00迄となっているんですが、その前に売り切れてしまい、皆さんに申し訳なくって・・・」とおっしゃっていました。

ですから、希少性と貴重性はありますが、「たくさん売って儲けよう」などというお考えなど全くありません。
慎ましやかな誠実さが光る素敵なお店です。

確実にゲットするためには、並ばなけらばならないかもしれませんが、ぜひ行かれてみてください。

 Yeast Side Donuts
 住 所:江東区東陽3-1-7
 営 業:土曜日と日曜日のみ
     12:00~17:00

どうかどうかご無理をなさらず、お体にはお気をつけてお店を続けてくださいませ。

それでは失礼いたします。
「もっとお米を食べようね社」


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